ファッション

撥水と防水の違いは?防水性が劣化する原因とケア方法も紹介

2022年10月24日

 よく耳にする「防水」と「撥水」という言葉。一見同じに見えますが、全然違う内容というのはご存じでしょうか。また違うことは知っているものの、具体的にはどう違うのかわからないという人もおおいのではないでしょうか。今回はこの2つのハッキリとした違いをお伝えしていきます。

撥水性

 まずは「撥水性」からです。こちらは読んで字のごとくですが「水をはじく状態」のことです。

こういう状態のことですね。

ちなみに撥水性を持たせる方法は2種類あります。

撥水剤による撥水性

 これは一般的な撥水性であり、生地の表面にシリコン樹脂もしくはフッ素樹脂によりコーティングを施すことで撥水性を担保する方法です。「この記事は撥水性がありますよ」「撥水加工しています」といった洋服や、市販の撥水スプレーはだいたいこれに該当します。

 ただし加工であるために劣化もしてきますが、これは再び撥水スプレーをかけることで復活もします。コーティングを再びかけなおすイメージですね。

生地による撥水性

 これは少し珍しいのであまり知られていないのですが、コットン生地を非常に高密度に編むことで、水分が触れることでコットンの生地が膨張し水を弾く「ベンタイル」という生地があるのです。

 このベンタイルという生地は戦時中のイギリスで開発されたのですが、当時は科学技術も勿論今ほど進歩しておらず、防水性や撥水性を担保することは非常に困難でした。そのため飛行機のパイロットが海上に不時着しようものなら、ほんの数分で命の危険に晒される状態でした。

 そうしたパイロットの人たちの命を少しでも救うために開発されたのがこのベンタイルだったのです。

 このベンタイル、防水性があると謳われることもありますが、厳密には今の基準では防水性はありません。せいぜい耐水性(防水まではいかない)までであり、撥水性を持つものと考える方が良いです。

撥水の反対である親水性

 一般的に撥水性の対義語と言われるのは「親水性」です。親水性は水を弾いていない状態のことを言います。車のガラスで考えるとわかりやすいのですが、水滴がペタ~っと広がってしまう状況がありますよね。これが親水です。逆に水が水滴のように丸い球体になって弾いているのが撥水ですね。

「超撥水」とは

 そんな丸い球体に水を弾き、パラパラと水が流れ落ちるほど水を弾いている状況のことを「超撥水」と言います。厳密にいうと水滴が生地に対して接触角が150度以上という条件があるのですが、イメージはほぼ球体に水を弾いている状況のことです。

 以上撥水性について色々見てきましたが、「そんだけ弾いてくれればもう防水でしょ」とも感じますよね。ただ、超撥水でも防水は担保されていないのです。(勿論共存している場合はあります)

 紙に水を落とすと徐々に染みこんでいきますよね。撥水は水を弾く現象ですが、ずっとその場で水滴が留まったり更に水圧をかける(座るとか手で触れるでも)ことで生地に水が染みこんでいってしまうのです。ここが防水性との大きな違いです。

防水性

 すなわち「防水性」とは「水を浸透させない性質」のことを言います。弾いているかは関係ないことになりますね。

 洋服で防水性を担保しているものではよく「防水透湿性」と言われますよね。これは防水性に加え中の湿気を逃がす「透湿性」も兼ね備えている生地のことを指します。つまり、「外からの水は通さず、中の湿気は逃がす」という生地です。技術の進歩はすごい(笑)

 有名どころでは「ゴアテックス」です。対抗馬で「イーベント」などもありますが知名度はまだまだ。実質ゴアテックスの一強の世界かもしれません。

防水性の数値

 防水性の数値に耐水圧○○〇㎜というのがあります。この数値が高いほど防水性能が高いことになるのですが、一般的に登山をする人などレインウェアに採用する場合には20,000㎜~30,000㎜は最低欲しいと言われています。この数字があればレインウエアとして使っても中に水が染みてくることはないでしょう。

防水性は劣化する?

 これはよく言われていますよね。「防水性が失われた気がする」「中がべたつくから透湿性も弱まった」など言われますが、防水性に関しては生地の構造上の話なので、基本的には劣化しません。基本的にはと付けたのは、生地自体の劣化がある場合がありますので何ともなのですが、ここでは割愛します。

 では防水性は保っているのになぜべたつくのか?これは透湿性の劣化です。これには主に2つの原因が考えられ、

  • 汚れによる透湿穴の目詰まり
  • 撥水性の欠如

の2つです。この2つを解決できれば防水透湿性は復活するはずです。

防水性の劣化の原因①透湿性の劣化

 透湿性というのは水は通さないが水蒸気は通すという非常に小さな穴によって成り立っています。しかしずっと着用していると汚れがこの穴に溜まってしまい、水蒸気が徐々に発散されなくなってしまうのです。なので、定期的に防水透湿性を持ったアウターというのは汚れを取るために洗濯が必要です。

 こうした防水透湿性を持ったアイテム用の洗剤がオススメ。これは生地表面の撥水剤は残したまま汚れを除去してくれる優れものです。

防水性劣化の原因②撥水性の劣化

 撥水性は水を弾く働きですが、これが劣化するとアウターの表面に水がぺた~っと張り付いてしまいますよね。そんな状況の生地で水蒸気が抜けるかというと。。。水で蓋をされてしまい水蒸気が逃げないことにより透湿性が失われてしまいます。なので、防水透湿性を持ったアウターに関しては撥水性の同時に考えてもらうのが非常に重要です。

 先ほどのニクワックスの洗剤の仲間で撥水剤も用意があるのでオススメ。少し小さいサイズですが以下のセット商品でお試しもアリ。

まとめ

 「撥水性」と「防水性」の違いはいかがだったでしょうか。ほんの小さな違いかなと思いきや、全く違うことを指している2つの言葉ということをわかっていただけたのではないでしょうか。

  • 撥水性・・・水を弾いている状態
  • 防水性・・・水を浸透させない性質

 ここまで聞くと「防水性」>「撥水性」と感じると思いますしそれは間違いないと思います。一方で防水透湿性を持ったアイテムは一般的に高価ですし、レインウエアとしてこういったアイテムを探している人はそこまで多くないのではとも思っています。登山やツーリングなどでは必須ですが日常使いであれば傘がありますので、撥水性で十分だと個人的には感じます。

 自分には「撥水性」と「防水透湿性」のどちらが必要なのか、コスト面と相談しながら良い一着が見つかるといいですね。

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